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信州支部便り 3月号

【コラム】 信州支部 前田 一樹  ※信州支部メルマガより転載

 信州支部 お問合せ:shinshu@the-criterion.jp


▼03月02日配信 クライテリオン最新号と信州支部の関わり②

最新号の『クライテリオン3月号』において、もう一点、信州支部と関わりがあることがあります。それは、「第6回表現者賞発表」です。


この度、めでたく表現者賞を受賞されたのは「首藤小町氏」でした。その文章が持つ魅力については、最新号「140頁」に掲載されている編集部の選評をご覧いただくとして、首藤氏と信州支部の関わりなどついて簡単にお伝えします。


首藤氏を最初に知ったのは、2021年に行われた、「表現者クライテリオン関西シンポジウム」の折でした。


当時、高校生として参加されており、大学には進学せず独学の道を行く聞き大変印象に残りました。


その後、2022年に長野県塩尻市に柴山桂太先生を、2023年に長野県飯田市に施光恒先生を招いた「信州学習会」に、わざわざ関西からご参加いただき、その向学心の高さに驚きを覚えました。


そのような関係性があったため『クライテリオン』に掲載される文章にも注目しており、20代前半という年齢からは想像もできないほど透徹した精神性と、なにより文章全体に「人を引き込み読ませる求心力」が備わっていることに感服していました。


一読していただければ、その中心には個人の才能ということを越えて、日本の伝統への繊細な感受性に満ちているのがお分かりいただけるかと思います。


いつかそれが認められ表現の場が広がっていくと思っていましたが、これほど早くその機会が訪れ、今後の活躍が見られると思うと、今回の受賞は嬉しいものでした。


着実に経験を積み重ね、ますます文章力を開花させていっていただくことを確信しています。今後の「首藤小町氏」の活躍に是非ご注目ください。


信州支部もその活躍に力をもらいつつ、活動を継続していきたいと思っています。



▼03月09日配信 政治の基層に身を置く言論の場について

「本書も私も政治的ではない。ここで話されていることは、政治以前のものであり、政治の基層に属している。私の作業は、地下の薄暗いところでの坑夫の仕事である。」(オルテガ『大衆の反逆』、佐々木訳、岩波文庫、41頁)


上記は最近読み返した、オルテガの『大衆の反逆』からの引用で、「政治の基層に属している」という表現に深くうなずいた一文です。


これまで政治に関心を持ちつつも、どこかそれそのものに関与することに抵抗がありました。


このオルテガの言葉に触れ、政治そのものではなく、あくまで「政治の基層」に身を置きながら、そこで思考し活動する「言論」があることが分かりました。


それは、私自身の関心の在り方だけでなく、信州支部の活動にもつながるものであり、信州支部メンバーで協力しての「メルマガ配信」は、そのような活動の入り口になるものだと考えています。


社会的な問題について考えそれを、個人的にブログやSNSに書くこともできます。しかし、言論紙(『クライテリオン』)というオフィシャルな言論の場や、保守思想という歴史的な文脈につながりつつ、それをベースとして書く機会はなかなかありません。


また、共通の思想的関心や問題意識を持つ人間同士の関係性を伴った「共同体」として、「学び、議論し、書く」機会も、地方では非常に得にくいものです。


そのような場が生まれ継続していることは稀有なことですし、そこに、昨年より配信を始めたメルマガに、信州支部メンバーの文章が加わったことで、循環的に共同体が回りはじめた手ごたえがあります。


しかし、それは、オルテガの言葉にある通り、あくまで「地下の薄暗いところでの坑夫の仕事」であり、決して目立つものでも、目に見えるはっきりした成果が確認できるものではありません。


一庶民としての普段の生活を営みながら、物に出会い何かを感じ考え、そこから生まれた思考を言葉にしていく、「思考と言葉の連続性」があるだけです。


だからこそ、その継続性・連続性をもった生活に根差した言論には、「蓄積されていく知恵」があります。一例として「保守思想」ならば、歴史の連続性より持ち来たらされた「過去の遺産」を生かすという態度は、「政治」だけでなく、身近な「家庭」「仕事」「地域の人間関係」などにも通じるものです。


「政治の基層に身を置く言論の場」としての信州支部は、一本のろうそくの「灯」のようにはかない存在ではありますが、これからも仲間と連携し、言論を循環させることでその灯を絶やさずにいたいと切に思っています。


表現者塾には他の地域で活動する支部など(関西支部、東京支部、大分支部、岐阜同好会)があり、それぞれにスタンスの違いはあれども、近しいものを目指しています。


『クライテリオン』の言論に関心をお持ちの方には、これらの支部の定例会や企画に何等かの形でご参加いただければ幸いです。



▼03月17日配信 来月で4年目に入るにあたって、今後の活動について整理してお伝えします

来月で信州支部は、2021年4月に行った「表現者クライテリオン信州・松本シンポジウム」から活動をスタートして丸3年となり、4年目に入ります。


試行錯誤しながらこれまで継続してきて、活動の形態が定まってきたという感じがしています。ここで今後の活動について簡単に整理をしたいと思います。


1、開催月と時間


定例会は年6回「奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)」の第4土曜日に開催していきます。時間は、17:00~19:00までとし、それ以後に懇親会を行います。


2、内容


基本的には、クライテリオン最新号の読書会を行っていきますが、なるべく、東京の「表現者塾」と同様に講師の先生を招いて講義をしていただく形式にしたいと考えています。


規模は小さめとして、最大でも20人規模で実施する予定です。現在は、7月に「浜崎先生」、9月に昨年講義をしていただいた、「粕谷先生」にお越しいただく予定となっています。


ただ年1回は、長野県内のどこかで、クライテリオンに執筆されている先生をお呼びしテーマを決めて、大きな会場を借りてイベント的に「シンポジウム」を行うことも考えています。


3、場所


長野県松本市の「信州支部事務所」で開催しています。来ていただいた方はご存じですが普通の住宅です。私の実家の一室を事務所としているだけなのですが、とても気楽に集まっていただける場所となっております。


プロジェクターやスクリーンも準備されており講義ができます。読書会や講義を行ってから場所を変えずに、そのまま懇親会を行うこともでき、信州支部メンバーが集まる拠点として定着してきています。


規模を大きくする場合は、それに応じた会議室の使用を検討します。


たまには長野県の別の場所で定例会を開催するのも、気分が変わって面白いと考えています。また事務所で開催する場合でも、たまには松本の街に出て社交を兼ねた懇親会にもしたいところです。


4、メルマガ


これまで通り代表の前田が週1回のメルマガを配信し、信州支部メンバーの記事は月替わりで配信していきます。


これまで信州支部の活動を少しでも知っていただくためにメルマガを配信していましたが、我々にとっても、信州支部メンバーのなかで考えを共有したり、自身の考えを整理したりできる機会にもなっています。


また、これも構想段階ですが記事のストックがたまってきたところで、その中化から内容のよい生地を選んで、リアルな印刷冊子にまとめることも考えています。


以上の4点が今後の活動の基本となります。改めて手探りで運営してきた「信州支部」ですが、3年間活動を続けてきたことで、スタイル・輪郭が見えてきたことが分かります。


これからも5年、10年と活動を続け、地道に「信州支部」を育てていきたいと思っております。今後ともメルマガを読んでいただきつつ、ご興味を持たれたところで、信州支部の活動にご参加いただければ幸いです。



▼03月23日配信 信州でLRTの有効性について考え、地方から声を上げる

「最新号の『クライテリオン』(3月号)」の特集は「日本を救うインフラ論―今、真に必要な思想」であり、インフラの重要性について取り上げられています。


その号の「座談会①」の中で、元参議院議員の「脇雅史氏」の言っていた一言に触発されるところがありました。


脇氏は緊縮財政によってインフラ投資が進まないまま来ている現状の打開策について聞かれ、


「この国をよくしようと思う気持ちは皆もっているはずなので、とにかく声を上げて、強い意見としてまとめていくことが大事ですが、他力本願ではなくそれぞれができることをやらないといけません。どこかでうまくいった事例を他の地域も真似するような状況になのが一番です。「俺のところはこうしたい」という発想を大事にするところから始めるしか道はないな、というのが最近の思いですね。」

(『クライテリオン3月号』、30頁)


と発言されていました。


財務省が強いてきた緊縮財政は日本に「失われた30年」という、巨大な害悪をもたらしていますが、それを批判するのと並行して、各地域において自分達が住む地域をどうしたいのか住民が議論し、アイディアを出していくことが必要です。


予算が付いただけでは、それを有効に活用する方法が明確になりませんし、地域について自ら考える「地域住民の公共心」がインフラ整備において欠かせないという点からもそう言えます。


つまり、【トップダウン=財務省批判】と【ボトムアップ=地域づくり論】の両方が求められるのではないか、ということです。


また、「どこかでうまくいった事例」という点で思い出されたのは、最新号の別の箇所でも取り上げられています、昨年、宇都宮に開業した「LRT(ライト・レール・トランジット)」です。


バスと違い渋滞に左右されることなく定時に運行し、乗降もスムーズで、車に依存せずに買い物や飲食ができるという、実現すれば地域の人々の暮らしに新しい足を提供する、今後期待の持てる公共交通機関です。


実際、反対運動などもあり20年ほど設置までに実感がかかったとのことですが、利用者は多くおり、「開業から165日目で累計利用者200万人」を達成し、平日は、「1万2000人。休日は9000人」が利用しているようです。


上記の2点について思いを巡らせたことで、クライテリオンの議論をベースに長野県という地域で活動する「信州支部」にできることとして、長野県にもLRTを導入してはどうかという趣旨で、「LRTの有効性をアピールするシンポジウム」を開催することを考えました。


まだ構想段階ですが、信州支部に参加しているメンバーとも相談しつつこれから企画を練っていきます。詳細が決まり次第お伝えしていきますので、実現した際は是非足をお運びいただければ幸いです。



▼03月28日配信 令和5年度ラストー「クライテリオン最新号(3月号)」座談会の共有

先週3月23日(土)に、令和5年度、最後の「信州支部定例会」が開催されました。内容は「クライテリオン最新号(3月号)」の座談会でした。


座談会は、参加者が最新号から自分が気になった記事を取り上げ、感想や発見、疑問などを発表し、それをベースに意見交換を行い、ある程度話したところで、次の参加者に移り、それを順番に回していくスタイルで行っています。


今回のメルマガでは、そこで交わされた意見の一部をお伝えいたします(見出しには「記事の名称、著者、ページ数」を表記しています)。


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〇「理念・理想なきインフラ政策が導く未来」(佐々木邦明、P73~)


・佐々木先生と「信州支部」の関わりがあって、今回の原稿が掲載されたことに感慨深いもの感じた。「土木工学」は理系の分野ではあるが、人々を幸福に導くためには、そこに「思想」がなくては成り立たないものだということを学んだ。


・「コンパクト・シティ」という言葉がある。イメージのよい言葉だが、「都市」の周辺地域の暮らしを切り捨て、都会に人々の暮らしを集中させようという「コスパ重視」の考えてあると思った。その側面も考えておきたい。


・日本全体の国土を活用するほうが、国としての「活力」が出るのは自明のことだ。「選択と集中」という言葉の先には、日本脆弱しかないと思われる。


〇「宮本常一のインフラ論」(中尾聡史、P102~)


・日本全国の人々の暮らしを調査し、その声に耳を傾けた宮本だからこそインフラの重要性に気づけた。そして、説得力ある言論だと思った。


・長野県にも「過疎地域」が沢山ある。その地域の暮らしが途切れてしまいえば、同時にそこに存在する文化も死んでしまう。長野県の「過疎地域」の暮らしを途切れさせてはいけない。そのためのインフラ整備の「交通」の重要性を訴えたい。


〇「農を語る:有機農業は日本再生の第一歩である 第3回」(松原隆一郎×藤井聡、P151~)


・「有機農業」の定義は複雑なものであり議論があるところではあるが、その価値が理解できる対談内容であった。


・地域共同体のなかに、「稲作」が位置づいていることが、日本の文化の根幹だと考えている。また、共同作業を伴うため、信頼関係によっても保たれている。そうした、文化としての農業や共同体は「社会的共通資本」として守られるべきである。


・現在の農協が、「金融」に重点を置いていることに納得がいかない。本来は農家に農業技術を伝える役割を持っているべきだ。原点回帰を望む。


〇鳥兜:「政治」を失った社会―敗けてしまった国の末路(P9~)


・敗戦で日本人が、「ナショナリズム」を喪失したことを端的に指摘した内容であった。この視座がなければ、「政治への意思」は生まれない。もの考える上で忘れないでおきたい。


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以上になります。参考になりましたら、掲載されている記事をお読みいただければ幸いです。


さて、来月から始まる「令和6年度」で、「信州支部」が活動をはじめて4年目に入ります。地道に活動を続けてきたことで、関わるメンバーも定着してきました。


協力して、クライテリオン執筆者の先生を招いた講演を企画したり、メルマガを共同で執筆したりすることは、当初からは考えもしなかったことでした。


ただ、まだまだ長野県内に繋がっていない「クライテリオン読者」はいると思いますし、それだけではなく、今後、対外的な発信力もつけていきたいと思っています。


そのためにも、これからも細く長く活動を継続していきます。今後とも信州支部をよろしくお願いいたします。

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