1本のナスの根っこと「逆命利君」
- 6月30日
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【コラム】 信州支部 長谷川正之(経営コンサルタント)
毎年栽培している我が家の家庭菜園。秋には夏野菜を片付けるのですが、昨年はいつもと違ったことがありました。
「ナス」の根を掘っていたときです。 ナスは深根性なので、いつも掘るのに一苦労しますが、なんと「とてつもなく長い根っこ」が一本現われました。土中から引っ張ると、広く遠くまで根が張っていて4メートルはありました。
今まで見たことがありません。他の根はまとまっていたのですが、一本だけ全く違う伸び方で驚きました。
その後、2ヶ月ほどこの根のことが心に引っかかり、私の人生に重ね合わせて考えたことを書きます。
私は54歳まで30年間ほど農協組織に身を置いていました。振りかえれば、少し独特の組織人間だったと思います。
私の仕事に対する姿勢は、上司からの指示命令でも、おかしいと思ったことは意思表示する、というものです。若い職員が思っていても言えないことがあれば、代わりに発言する、という厄介な(笑)人物でした。
この行動スタイルは、30歳代後半にある本を読み、その主人公に憧れ、よりはっきりと意識するようになりました。
その本とは、佐高信著『逆命利君』です。「命に逆らいて君を利する、これを忠と謂う」を略した言葉。上司の命令でも、会社のためにならないことは逆らってでも進言する。イエスマンとはほど遠い人間です。
私の場合の「君」とは、「農協組合員」です。組合員のためにならないと思えば、同調圧力が強くても上司の指示命令に逆らい、一人意見を述べたこともありました。もちろん軋轢も。
ですから、上司でも、私を認めてくれている方よりも嫌っている(疎ましく思っている)方が正直多かったかと思います。選択定年で辞め、その後公務員に採用され(県庁職員や市役所職員)仕事をしてきましたが、この「逆命利君」のスタンスは少なからず維持してきたと思っています。
その支えとなったのは、30歳で取得した「中小企業診断士」という資格を有していたからと今では思います、もちろん勉強も人一倍しましたが。自分の考えをしっかり持ち、一人でも組織の役に立つ。このことが、ナスの一本のなが~い根っことどう結びつくのか?私の考えはこうです。
ナスを全体で捉えた場合、「君」に当たるのが紫色の実です。そのために根が土の中で水分や養分を吸収し、光合成により栄養分を作り出し、花を咲かせ実をつけます。
たくさんの根は、結実のために役割を果たします。それぞれが立派な実をつくるために貢献しているといえるでしょう。
根は、植物を支える根幹です。 今回の一本は、例外的にどんどん伸びていきました。他の多くの根とは同調せず、水分養分を吸い取るために思う存分役割を果たしたのです。
実際、このナスはたくさんの立派な実がなりましたが、後で掘ってみて、この一本の根が大きく貢献していたことが分かり、愛おしくなりました。 掘ってみなければ、この一本の根に気づきませんでした。
「人知れず役割を自由に愚直に果たす」
その根は、「逆命利君」を心に秘めて生きてきた私にとって同じベクトルを感じ、つながっているように思ったのです。
できれば、この根っこと会話し聞きたいのです。 「あなただけ土の中で、どうしてそんなに頑張って伸びちゃったの?ナスを食べる人のことを考えた?他の根っこのことはどう思う?途中いろいろな虫や微生物が邪魔しなかった?」と。
答えをあれこれ想像しつつ、心で「ナスを立派に育ててくれてありがとう、美味しかったよ」と伝えました。
それにしても、この根は見事に自由に力一杯生きたなあと感心します。 今年もナスを栽培しますが、はたしてどんな根っこに出会えるか、今から楽しみです。
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