部活動が象徴する日本の教育課題
【コラム】 東京支部 清水 一雄(高校教師)
先日、表現者塾東京支部の学習会で「部活動が象徴する日本の教育課題」というテーマで発表する機会をいただいた。「部活動指導」特に高校運動部活動の現状を振り返ることによって、あらためて「日本の教育課題」を整理するきっかけとなった。
2026年5月に新潟北越高校のソフトテニス部遠征中のバス事故で1名の生徒が亡くなるという事故が発生したが、報道はどれも、安全管理上の問題の指摘にとどまっていた。文科省も安全管理の徹底を各学校に通知したが、この事故の背後にある「部活動の過熱化」と「部活顧問の過剰負担」の関連について言及することはなかったように思える。
まず指摘しておきたいことは、中学・高校の部活動は教育課程外の活動であることである点である。部活動はあくまで、生徒の自主的・自発的な参加により行われるものであり、学校の判断で実施しないこともある活動ということが学習指導要領に明記されており、このことは一般に知られていない。教員ですら半数近くは知らないという事実がある。それどころか「部活動こそが本来の仕事」と思って(思い込ませて)過ごしている教員も少なくない。
ご存じのように、炎天下で行われる夏の甲子園は野球部であれば目指さなければならない目標であり、その一勝に向けての活動は、学校の中でも優先度の高い活動とみなされている。野球のみならず、サッカー、テニスなどの運動部は大会実績を上げることが実質的な目標となっており、好むと好まざるとにかかわらず、顧問はそのことを念頭に普段指導にあたっている。
平日の放課後はもちろん、土・日は練習試合が組まれることが多い。強豪校となれば、近隣の学校に手の内を知られたくない。そのため、遠く県外へ遠征し、県予選では当たることのない学校と練習することになる。ちなみに北越高校はソフトテニスの強豪校らしい。顧問は遠征先で審判などもやるので、平日の活動にもまして教員の負担は重くなる。
その一方で、部活指導に係る手当はといえば、平日は何時間従事しても0円、土日は特殊業務手当として2~4時間程度で1800円、4時間以上で3600円となっている。今後は3900円も検討されているそうだが・・・。
顧問を任せられる教員は、必ずしもその種目を経験しているとは限らない。教員不足であることから若いというだけで任せられることも多い。
これらからお分かりのように、運動部顧問は油断していると休めないのである。その上、部活指導はアルバイトの時給以下の仕事とみなされている。しかし不満は言えない。なぜならば部活動は教育課程外の仕事なのだから。
さすがにこのままではいけないと、文科省も動き出した。「部活動の地域移行」である。
そもそも、ここまで肥大化し、過熱化した部活動を学校以外の地域が担えるのか。2023年~2025年は「改革推進期間」、2026年からは「改革実行期間」と位置づけられている。移行の見込みはといえば、2028年度には1割弱の部活動を地域クラブ化のようである。しかも、それは中学部活動に限っての話であり、高校部活はほとんど手付かずである。
地域の共同体がここまで崩壊している現状で、この改革はうまくいくのだろうか。「学校が困っているならばみんなで面倒見よう」は誰もが受け入れやすい解決策に思えるが、冷静になって考えてみれば
活動場所はどうする? 指導者はどうする? 報酬はどうする? 怪我の責任は?・・・
など、厄介な問題が次々と浮上し、超えるべきハードルの高さに尻込みもするだろう。
当面は学校にお任せしようということなのか、最近「地域移行」から「地域展開」と名称が変わった。「展開」にすれば活動の中心は学校外に置いたまま、活動の場を学校外に広げればよいことなのだろう。仮にそうなれば、学校が地域との連絡役を担うことにもなり、さらに負担が増すことになりはしないか。これでは何のための地域移行かわからない。
これは部活動に限った話ではない。「教員の善意」に多くを負っている学校教育の現状をあらためて問い直す時がきている。
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