児童と昔あそびをする
- mapi10170907
- 10月27日
- 読了時間: 4分
【コラム】 信州支部 長谷川正之(経営コンサルタント)
私は20年前に、地元小学校のPTA会長をやりました。翌年、歴代のPTA正副会長会を発足させ、以来、小学校児童の安全確保のほか、学校の要請を受けてバックアップしてきました。
今年度、学校からお呼びがかかり、初めて取り組む「昔遊びクラブ」(4年生〜6年生の11人)の外部講師をしてもらえないか、と依頼されたのです。学校の通常時間内で月に何回か好きな活動をする場で、「昔あそび」という「エッ」と驚きそうなクラブに10名ほどがエントリーしてくれました。
60年ほど前、小学生現役時代に他の誰よりもよく遊んだことが伝説的に伝わり評価されたのか、はたまた、大学時代の「児童文化研究会」所属というキャリアがものを言ったのかは定かではありませんが(笑)。
二つ返事でお受けし、昔よくやった「花いちもんめ」「ハンカチ落とし」「だるまさんが転んだ」「かごめ」等、簡単な資料を作って初回に説明しました。予想に反して、半数の児童は知っていてスムーズに遊べました(「かごめ」だけは、ほとんど知らず)。
昨今は、タブレット学習やスマホゲーム等、個人で行なう学びや遊びが主流となっていて、集団での遊びが苦手かと心配しましたが、意外な反応でした。保育園や低学年時に時々やっていたようです。
そして、学級や学年が違い、名前も知らない男女の児童たちは手をつなぐことが出来るのか、嫌がらないかドキドキして見ていましたが、自然に手をつないでいて安堵。
私の時代では、中学時代の思春期前といっても「男子と女子が手をつなぐ」ことは特別のことだったと思いますが、このグループならではの行動なのかはわかりません(自ら参加した児童なので普通のこととは思いますが)。
「人と人が手をつなぎ合うことは自然で大切なことだ」と記憶のどこかに留めて欲しいと思います。
また、「花いちもんめ」を2組に分かれてやりました。横一列に手をつなぎ、代表がジャンケンで勝ったほうから歌い始め、前に進んでみんなで右足を振り上げる動作があります。その時、お互いニコニコして足を一緒に思い切り振り上げている様子を見ながら、感ずることがありました。
子供たちが、「みんなで同じ動作をリズミカルに行なう」ことは、昔から「あそびの場」が主ではなかったでしょうか。親から離れ、1人ひとりが自主的に遊びの場を選択し、その場の相手とつながりながら一緒に夕暮れまで行動することは、昔の貴重な人材育成の機会だったと思います。だからこそ、相手を思いやる心も、相手から学ぶ主体性も培えたと思うのです。
もう一つ、「昔あそびクラブ」で児童たちと遊んでいて、驚いたことがあります。それは、「鬼になりたがる児童が多い」ことです。
私たちの年代は、少なくても「鬼」は妖怪の一種で、忌み嫌う存在であり、遊びでも「鬼になりたくない」と多くの子どもが思っていました。
私はというと、「鬼ごっこ」が好きでした。私の人生で足の速さを誇れるのは小学校時代までであり、鬼になりたくないので捕まらないよう逃げまくるのは快感でした。しかし、その後はまわりの仲間が速くなり、鬼ごっこもやらなくなりましたが。
では、このクラブではなぜみんな「鬼」になりたがるのでしょうか。今回の遊びでは、「だるまさんが転んだ」で鬼を決めましたが、一般的に鬼は単に「捕まえる役」と捉えています。が、私が仮説として思ったのは、鬼は「遊びを支配するキーマン」ではないかということです。
「鬼」は忌み嫌う存在ではなく、動いた人を見つけ次々に捕らえ、この遊びを動かす「肝心の人」という役割を与えられています。その鬼になりたがるのは、遊びに主体的に関わりたいという証といえます。そして、いろいろな遊びで「鬼」は次々と交代し、平等に機会が与えられます。
大人になり、「鬼」には、「常人では考えられない努力や集中力を見せる人」という意味の「土俵の鬼」という使い方や、「勇ましく強い人」という意味の「鬼軍曹」などを知ります。また、「鬼の目にも涙」のように、「どんな冷酷な人でも涙を流すことがある」という、人の情け深さを表す言葉を知り、取り巻く世界が広がっていきます。
「あそび」を通して、子供たちは好奇心、集中力、創造力、コミュニケーション能力、助け合いなど、生きていく上で必要な様々な力を育むことができます。改めて、「集団での遊び」を意識的に創出し、精神文化を保守していきたいと思っています。
最後に、私は20年前のPTA会長時の入学式挨拶で、新1年生にこんな話しをしたことを思い出しましたので、記します。
「学校に入学して、大切なことをいいます。一つ目は『あいさつ』。おはようございます、さようなら、をしっかり言いましょう。二つ目は『そうじ』。しっかり教室をきれいにしましょう。三つ目はもちろん『べんきょう』です。おうちでもしっかりべんきょうしましょう。さいごに、『アいさつ』『ソうじ』『ベんきょう』でそれぞれ最初の文字をとると「アソベ」です。みんな元気にいっぱいあそびましょう!」
コメント